2011年4月16日(土) 犬の野生?

 さて、今、ラオスの正月である。昨日から、泊まりで、ヴィエンチャン郊外の友人の実家に行って、お正月を一緒に祝ってきた。
 ということで、ダンナと私と二人とも出かけ、いつも、私たちがいない時に、犬どもの面倒を見てくれる友人も、お正月休みで地方に行っていていない。
 犬の飯である。
 飯をやる人が・・・1日であるが、いない。
 昨日、午後出る前に、うんとこさたくさん、ご飯に肉を入れて煮たえさを、たくさんやってから、出かけた。
 なにしろ、3匹いるし、今、一番小さなメリーが妊娠中で、まぁ、よく食うよく食う。デブのラッキーもよく食べるし、痩せのペプシもよく食うのだが、昨日の午後以降、犬たちは、ご飯をもらっていない。(まぁ・・・・そのくらい、どってこともないことであるが・・・・・)

 さて、今日の午後3時ころに、やっと帰ってくると、3匹が、尻尾を振り振りダッシュしてくる。と、思いきや、いつもは一番先にクゥ〜ンクゥ〜ンと、10年ぶりに再会したくらいの喜びを爆発させて飛びついてくるペプシが、急に方向をかえ、何やらあちこちを駆け回り、ワンワンやたら、上に飛び跳ねている。小鳥に飛びついているのである。あっ、とった!ペプシが小鳥をくわえて落とすと、今度はメリーが飛びついてくわえて、ブルブルと頭を振る。小鳥、絶命。
「メリー、放しなさい。放しなさい」と私。
 メリー、くわえて放さず。
「メリー、放しなさい。わぁ、メリー、食うな」
 メリー、くわえて放さず、食う。お腹すいているんだもん。かまうもんかと、結局、半分くらい食べてしまった。ペプシは自分でとったのに、小鳥には知らん顔である。この小さなかわいいメリーが、小鳥を喰う姿に、いささかあ然。
 
 それにしても、ペプシだって、お腹はすいているだろうに、ペプシはメリーにとってやったのだろうか?メリーが妊娠してお腹がすいているのを知っているのかな? ペプシ、なかなかいいやつじゃないか!

 うちの犬どもも、ヴィエンチャン暮らしで、甘やかされている犬どもなのであるが、それでも、自活?するとは、まだまだ野生が残っているのかなぁ・・・・と、勝手に思いこんで、ちょっと感心した。毎日、ドッグフード食べていたら、こうはならないんじゃないかなぁ・・・・と、お正月とは全然関係のない話題でした。

2011年4月22日(金) 犬の野性?2

 メリーのお腹が大きい。10日ほど前に、メリーは一度、家の裏の小さな隙間で砂地になっているところに穴を掘った。一生懸命、穴を掘り続け、そして、中に入った。
「え〜、メリー、ここに子ども産むのかなぁ」とびっくりして言うと、ダンナは
「ただ、穴を掘っただけだろ」と言う。「まだまだ、子どもは生まれないよ」

 さて、それから、メリーは元気に食べ、元気にお腹が大きくなっているが、元々小型犬なので、いったい、このお腹で、何匹子どもが入っているのだろう?よっぽど小さい子なんだろうなぁ?犬の子は、お腹の中で蹴ったりはしないんだろうなぁ?などと思いながら、ハァハァ〜と荒い息をしているメリーを見ている。
 さて、昨夜、遅くなって、メリーが見あたらない。他の2匹はいるのに、メリーだけいない。ペプシに
「おまえ、メリーどこ行ったの?知らないの?」
というと、心配そうに戸口から外を見つめているが、帰ってこない。まったく・・・・妊婦(犬)のくせして、夜な夜な遊びに行くとは・・・・・普段だったら放って寝てしまうが、ダンナも「まったく・・・困ったもんだ」とか、心配そうに、外を覗きに行ったりしている。「じきに戻ってくるだろ。ぼくはまだ起きて待っているから、寝ていいよ」と言うので、先に2階に上がって寝た。
 しばらくすると、2階に上がってきた。
「メリー、帰ってきたの?」「いや、外に出たんじゃなくて、家の裏の穴に入ってたよ。穴の中で、クンクン言ってたよ。呼んだら出てきたけど・・」と言う。
 やっぱり、メリーは、自分でお産をするために、穴を掘ったのだろう。そして、そろそろ時が来たのか。
 その晩は、うちの中に寝せたけれど、朝、扉を開くと、メリーは後ろも振り向かずにトットと出て行って、穴の中にまた入った。
 見てみると、まぁよく掘ったものである。ちょうど、家の裏の薄くセメントを塗った場所の下を掘りぬいて、そこにまるまる入り込んでいる。10日前ほどに、掘った時には、頭を突っ込んでもお尻が出てしまうほどの穴だったが、あれからたびたび掘っていたのだろう。
 メリーは、誰に教わったわけでもないのに、こうして、お産にのぞんでいる。メリーは野性児でもなく、ラオスのヴィエンチャンでレストランを営むフランス人にもらった、わりと、お育ちのいい?犬であるのだが、それでも、ちゃんと脈々と受け継がれてきた自然の血が、メリーに行動を教えている。
 不思議だなぁ・・・・
 メリーはたまに、出て来て、食べ物をせがんでは、また穴の中に寝ている。
 いつ、子どもが生まれることやら?そして、いつ、小さな子どもたちを連れて、穴から出てくるのだろう?
 メリー、頑張れ。


 メリーは、その後、穴を出て、家の裏に置いてある棚と塀の裏に入り込んで、くわえて行ったダンナの靴片方と一緒に寝ている。メリーは、ダンナの靴が大好きなのである。きっと安心するんだろう。さて、私はたびたび、メリーを覗いていたが、昼ごはんの用意をして、さぁ、ご飯という前に、もう一度メリーを覗きに行くと、なんだか、黒いぶよぶよした袋みたいのが出ているではないか・・・・・私は、大慌てで、ダンナに
「出たかもしれないよ。生まれたかもしれない」と言いに行き、ダンナも大慌てで見に行くと、「わぁ、生まれている」、でも、その黒い袋の中の物体は、動かない。ダンナは、すぐ手にとると、「死んでいるのかな」と言う。
「あぁ、かわいそうに・・・・メリー、この前にも一回流産している。またしても・・・・」私は、まともに見られない。「あぁ、動いている、動いている」と、ダンナは、子犬が入っている袋を裂くと、黒い小さな子犬が出てきた。
メリーは、初めてのお産で、やっぱり、どうしたらいいか、おどおどしているようである。
「早く、メリー、へその緒を噛み切るんだぞ」とノイが言うけれど、メリーはまだ噛み切れない。
「はさみと糸」とダンナが言うので、私は大慌てで、はさみと糸を持って行く。彼は、やったこともないのに、自分で、へその尾を切って、子犬をタオルで拭いてやっている。そうこうするうちに、また、メリーのお尻から、袋が出てくる。今度は、白に黒ぶちの犬だ。今度は、メリーは、自分で、その袋を食べてしまった。うっかり、子犬の脚までもがメリーの口に入っている。
「こら、メリー、こら、メリー」とダンナが子犬を、メリーの口から出す。2匹の生まれたばかりの濡れた子犬。メリーはしきりになめている。と、また、お尻から袋が・・・・今度は茶色の子犬だ。わぁ、3匹生まれた。
 メリーの子犬たちは、まもなく、メリーのおっぱいに吸いつく。



「あぁ、犬のお産の面倒みたのなんて、初めてだ。あぁ、疲れた。飯にしよう・・・・でも、その前に水浴びだ」
と、ダンナが言う。私なんか、怖くて手も出せないのに、ダンナは産婆さんのように、メリーの子どもたちをとりあげた。さすがに汗びっしょりである。
 ダンナが水浴びしている間に、もう一度覗きに行くと、あれ、また、袋が・・・・・
「もう1匹出てきた」と、慌てて言いにいくと、ダンナは腰にタオルを巻いただけで、出てきた。
「今度は、真黒だ」と。最後の子は、一番大きな子犬だ。黒、ぶち、茶、黒の4匹の子犬が、グレーのメリーから生まれてきた。子犬たちは、キー、キー、キーと鳴きながら、お母さんのおっぱいに並んで吸いついている。メリーが、急に、立派なお母さんになっているから、不思議である。



 雨雲が広がってきたので、雨が降って濡れると大変だから、メリーと子どもたちを、雨が降りこまない場所に、段ボールを置いて、布を敷き、仮犬小屋を作って、移した。結局、メリーの穴は使われなかった。まぁ、やっぱり、メリーはそこまで野性児ではなく、結局、ダンナがお産婆さんとなったので、穴の中で産まずに正解だったわけだ。

 夕食を食べていると、メリーが、尻尾を振り振り(メリーは実はほとんど、尻尾がないので、お尻をふりふり)やってきて、食べ物をねだる。今日の人間の夕食は、ほとんど肉が入っていない。
「わぁ、ごめん、あげるものがないよ・・」と、サツマイモをやると、ムシャムシャ食べる。でも、かぼちゃをやると、フンと食べない。さて、メリーがこうして、4匹の子を置いてきているすきに、さっきから興味津津のラッキーが子どもたちのところを覗きに行こうとする。メリーは気がつくと、大急ぎですっ飛んでいって、ラッキーと子犬たちとの間に立ち塞がり、ワンワンと追い返そうとする。
 さて、その後、メリーと一緒に、子どもたちのところを見ると、わ、2匹しかいない。
「わっ!大変だ。2匹しかいない」と、私がダンナのところに言いに行くと、メリーの方が先に行っていて、キャン!キャン!大変だ!どうしよう!とばかりに吠えている。
「2匹しかいないのよ」と、私が言うと、ダンナも大急ぎで行く。1匹が、段ボールの中に敷いた布の向こう側に落ちていて、見えなかったのと、1匹は、布と同じ茶色で、さっきよく見えなかったのだ。
「ちゃんと、いるじゃないか」と、ダンナが4匹そろえると、メリーは安心したように、いそいそと、子どもたちのところへと戻って行った。

 ところで、犬にへそがあるということを、はじめて知った。考えてみたら、あるのは当然だろうが…人間のように、へこんだり、出たりしていないから、あんなに犬のおなかをさすっていても気がつかなかった。
「あるに決まっているじゃん。ネズミからはじまって、みんな、この手の動物はあるさ」
と、ダンナが言う。そうだよな・・・・その通り。犬もやっぱり、へその緒でつながれているわけだから、へそがあって当然だ。ペプシをひっくり返して見てみると、小さな、傷口のようなものがあった。これがへそに違いない。
 ちなみに、ラオス人のダンナは、「今日は、宝くじは犬番だな」と、そそくさと夕方、くじを買いに行った。犬番は、91、51などの、1がつく番号らしい。大外れ、今日はライオンの番号なのだそうだ。まぁ、犬のお産なんて、ラオスの中では、ほぼ毎日、どこかであるだろうから、そりゃ、仕方ない。


2011年4月24日(日) メリーの大切なもの


 ダンナが、図書館で使う棚を作ってくれた・・・のはいいが、ペンキを塗ったため、シンナーのにおいがきつい。家の裏で作っていたので、私は、子犬たちが、シンナー中毒になってしまうんじゃないか・・・と気が気ではない。
「子犬、こんなにちっちゃいんだもの。こんな匂いじゃ、危ないよぉ・・・・せめて、段ボールの犬小屋を匂いが入らないように反対向きにしおうよぉ」などと言っていると、最初は
「大丈夫だよ」と言っていたダンナが、
「反対向きにしたって同じだよ。犬たちを家の中に入れるしかないよ」と言う。そういうことで、メリーと4匹の子犬たちは、急遽、家の中の、私の仕事部屋の一角へ、引っ越しとなった。
 子犬たちが、段ボールから持ち出されると、メリーは本当に心配そうにしているが、家の中に入ることがわかると、安心したように、部屋の隅に敷かれた古いマットレスの上で、子犬におっぱいをあげている。
 さて夕方、そのメリーが、いきなり立ちあがって、外へとっとっとと出て行ったかと思うと、ダンナのゴム草履の片方を口にくわえると、トットットと入ってきて、マットレスの上に置いた。
「現場発見!」
 靴の片方(特のダンナの)が、よく移動しているのは、やっぱりメリーの仕業だったのだ。
 メリーにとって、ダンナのくつは、ライナスの毛布・・・・きっと一番安心するお母さんの匂いみたいなものなのだろう。自分が4匹の子どもたちみながらも、その傍に、ダンナのゴム草履があると安心するんだろう。

 まったく・・・・まいちゃうな・・・・
 メリーにとって、甘える相手はダンナで、ご飯をねだる相手は私らしい。



2011年4月26日(火) 日本に戻ってきた

 日本に戻ってきた。
 大地震の後、はじめて戻ってきた。
 朝、成田に着いたが、空港がいつもより暗いこと…歩く歩道が止まっていること…などに
「あぁ、節電しているんだ」と、改めて、感じる。
 リムジンバスに乗り、新宿に着いても、地下街もなんとなく暗く、西地下道の電気広告も電気がついていないことに、改めて、あぁ、そうか・・・そうだよね・・・やっぱり日本は、地震・津波・原発の影響で、節電なんだ・・・と感じる。
 そして、地下鉄やJRの、電車の広告まで少ない。東京のJRや地下鉄丸ノ内線では、これまで、広告はぎっしり空きなどなく、広告と広告の間に、間があるのは見たことがなかったけれど・・・・・あれこれ、自粛ムードなんだろう。また、実際に、広告なんて出していられない事情のところも増えたのかもしれない。

 あぁ、やっぱり日本は大変なんだ・・・・と思いながら、地下鉄の階段を上ると、明るい光が差し込んでくる。
 家への10分足らずの道筋。住宅街の中の道を歩く。

 なんてきれいだろう。
 新緑がきらきらと光っている。浅い緑の葉が、本当に、満面の笑みを浮かべるように、どの葉もどの葉も…自らが我慢できないように光っている。

「きれいだな」と一人でつぶやいている。

 咲きはじめたつつじや、満開の藤や、花こぶし・・・・春爛漫・・・そして、初夏への序奏曲を奏で始めている。地下鉄の駅から家に向かう、なんていうことのない住宅街の中の道でさえも、木々や花々が、ただ、咲いていること・・・ただ葉っぱを伸ばすことに、嬉しさを爆発させているようなこの季節。
 
 胸がいっぱいになった。
 
 季節はめくりめく。何が起ころうと・・・・季節はめくりめく。
 それは、ある時は無常であり、そして、ある時は、語ることもなく、私たちを勇気づける。